hogloidのブログ

へなちょこ

2021年度に読んだ本

順番もバラバラだし感想書いた時期もまちまちなので文体に統一感がないけど、どうせチラ裏なのでそのまま上げちゃいます。

事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学

人の心理の諸々の話。具体例が多くて分かりやすい (逆にエピソードいらんと思うなら冗長かも)。
色々あるけど、人は自分の都合のいい方向にこじつけて解釈しがちというのは本当にそうだな〜と思った一方、同調性バイアスの話については自分は周囲の意見(や世論)が自分と離れているほど意見を逆側に寄せたくなるのでホンマか?というようなエピソードもあった (まあおれが尖ってるだけや)。
あと、人の意見を何かを行う方向に変えさせたいときは誤解しているところを説得するのではなくメリットを提示して共感してあげたほうがいいが、何も行わない方向に仕向けたいときは恐怖感を植え付けておくのが効果的というのが非対称で不思議だなぁと思った(どっちも選択するという行動ではあるはずなのに)

脳パフォーマンスがあがるマインドフルネス瞑想法

なんかマインドフルネスって言葉が一時期流行ってた気がするので買ってみた。もう殆ど忘れたけど、目を閉じて呼吸だけに意識を傾けると雑念が片付いていいねとかそういう話だった気がする。
読んで初めて寝る前やってみたときは結構よかったんだけど、なんか続けていくうちにどうもマンネリ感が出て緊張感がなくなり雑念が入り込むようになってやめてしまった。あとは「これぜったい効く!!」って確信できないことを続けるのってなかなか難しいよね。

ショートショートの広場

ショートショートコンテストの優秀作を集めた文庫本。寝る前ちょこっと読んで目を休めるのにちょうどいい。短い文章の中でよくなるほどと思わせる面白さをスッキリと詰め込めるなと思う。これで公募なのだから恐るべし。

ノンデザイナーズ・デザインブック

デザインのことマジで一つも知らないなと思って買った、初学者向けの教科書。
評判通り、センスとか前知識はほとんど要求されず、全体を通して努めて客観的な説明がなされているので経験ではなく理解から入りたい人には向いていると思う。整列、グルーピングなどなど、まあ当たり前っちゃ当たり前なんだけどやはり言われないと気づかない点もあると思う。昔JOI合宿とかでもひどいスライドを作っていた身としても、なかなか耳が痛いぜ。
こういう教科書を読むといいこととして、特に役立たなくともものを見る目が少し変わって、出版物・作品の精巧さや努力がたまに垣間見れるようになるというのがあると感じる。

ファイナンス機械学習―金融市場分析を変える機械学習アルゴリズムの理論と実践

有名な本。9月頃暗号通貨取引アルゴリズムを作ろうと志したときがあって、これとか他の本を読んで勉強してた。
この本はとにかく実践的でかなり多くの細かいテクがカバーされている。コード自体はあまり読みやすいとは言えないけど、プログラムの結果もたくさん載っていてかなり丁寧な方だと思う。それでも技術的な本を読むのが結構久しぶりだったので式をちゃんと追おうとすると知的体力を使った思い出。

DIE WITH ZERO

貯金に駆られるな、体が動くうちにやりたいことをやっていろんなことを経験しろ、そのためにお金を使うことを惜しむな。という感じの旨が書いてある本

時間は不可逆なことはみな分かっていても、つい目の前の忙しさ・惰性などによって本当にやりたいことを後回ししがち。体力の制約や、(子供のいる場合)子供の年齢の制約などでその歳でしかできないことはたくさんあり、そこから得られる経験の優先度を意識的に上げて考えないと、あとあと後悔しつつ無駄にお金だけを貯めてしまう結果になりかねない。また若い頃の行動は思い出としても経験値としても大切で「配当」を継続してもたらしてくれるので、お金を貯めることに必死になるべきではない。

まあそうだね。元々社会人になった辺りで必要と思ったものはだいたい買うようにしてると思うし、お金が行動のトリガーを引かせないようなこともあまりなかったかな。強いて言えば正社員として働かなければもう少し自由ができるなと思ったことも3年前はあったけど、それも今は正社員のままでも相当自由にやれている。

かぜのてのひら

いいね。
まさか歌集を買って読むようになるとは思いもしなかった。しんみりするもの、どきっとするもの、シンプルに情景が浮かんでくるものなど色々ある。
副次的ないいこととしてかなり知らない単語や表現が多いことを思い知らされる(ちょっと古めの固有名詞が多いけど)。調べながら読んでいる。

三体

読んだ。長すぎひん?w

長編は読む前から気が重くなってしまうから普段は読まないんだけど、なぜか(実際は5巻なのに)1巻で終わりかと思いこれぐらいならまぁ読むか〜と思って買ってしまった。ずっと放置してたけどもったいないしな、と思い1巻を読んだら案の定かなり面白く、しかも1巻だけだと物語の序章でしかないので結局続きも読むことに……。 中身には立ち入らないけれど、予想を裏切る先の読めない展開、強烈なキャラの人物たちが繰り出すストーリー、スケールの壮大さが読んでて素晴らしく気持ちがいい。(まあ気に入らない箇所が無いわけではないが…)
SF自体も普段あんま見ないんだけど、基礎科学者が出てくる場面が多いのが結構意外だった。かなり長いタイムスパンで物語が進むので展開に説得力を持たせる必要性はあると思うんだけど、初見では地味な役職の人が主要な役回りを担っていくのが意外性があり、こういうのってSFでウケるんだと思った。
一番好きなのは最後の5巻目で、それまでも十分スケールがデカいんだがそれ以上に急に物語が加速してかなりすごいことになる。おすすめ

起業のファイナンス

読んだ。たぶんこの手の本の中ではかなりわかりやすく基本的な内容だと思う。ベンチャーがお金を調達する理由とその手段の解説や、資本政策で注意すべき点、あとは(あんまり興味はなかったが)コーポレートガバナンスの制度などなど。
まあたぶん自分が直接関わることはなさそうだが、一応ベンチャーにいるからにはこういうことも知っておくと諸々の理解の助けになる。あとは銀行は貸し倒れを避けるためリスクを取れない一方日本での資産の多くは預金の形を取っているのでお金の流れ全体としてリスクを取れず不況時には貸出先に窮することもあるというのがちょっと新しい視点だった。

労働者の味方を辞めた世界の左派政党

読んだ。kinvatiumが言及していたので。

まあタイトルで内容の3割ぐらいは推測できるタイプの本。かつては右派が資産階級の利益を代表し、左派が労働者の利益を代表していたのだが、先進国で教育水準が上がり、労働に必要な技能も上がりサービス業への転換が進んだことで典型的な労働者の占める割合が少なくなり、左派政党は彼らに変わって都市部の進歩的エリートを主な支持層とする戦略を取ったことで、右も左も労働者の利益を代表しないようになったことと、米英仏日の政党の具体例が紹介されている。イギリスのニューレイバーを標榜した労働党や、クリントン後期以降のアメリカ民主党・日本の民主党など。
またタイトルから予想できなかった部分として、金融政策と経済成長の話が内容の多くを占めている。著者はかなりの反緊縮派のようで、緊縮財政は経済成長を止め財政赤字(のGDP比)も改善しない、財政赤字はインフレによってでないと解消することは難しい、というのを各国の例を援用して強調している。またユーロ圏の例に触れ、通貨を共通化し金融政策を放棄したことでユーロ内での(少なくとも工業分野では)ドイツの優位が確定して他国は切り下げによる競争力維持ができなくなったことをフランスやイギリスの失敗とみなしてる。
ドーマー条件の節は普通におもしろいなと思った。(国債金利が経済成長率を下回るのなら、借り続けても対GDP比で累積の赤字は収束するので、財政は安定する) 政策金利とか、中央銀行とか何も知らないけど、何読めばええんや
あとは、この本だと金融政策は経済成長に本当に大きな影響があるように読めるが、正直選挙とかで大した争点として認識されていないようにしか思えず、選挙ってなんだかなあという気持ちに。

1984

ジョージ・オーウェルの小説。
架空の巨大国家で、党の支配を永続させるために生活のあらゆる面の監視を行うディストピア的な社会で生きる男などの話。

フィクションというのはあれど、例えば二重思考とかは割と現世でもよくあるというか、実際に思ってもみないことを主張するだけでなく、時にはその思ってもみないことを内面化して行動することもあり、まあ全部笑い話にはできないかもなと思った。
まあ全体主義が世界の主流になることは当面想定できないが…。この辺りはWW2直後頃の読者であればもっとリアリティを持って感じられたのだろうか。

明らかにバッドエンドで終わることがはじめから分かりきっている。個人が社会に打ち勝つヒーロー物ではないのはすぐ分かり、どこかで屈服させられるという予兆がそこかしこに現れているので。流れとしては確かに予定調和とも言えるけど、設定が緻密なのと、終盤の描写も真に迫っていて面白かった。

資本主義リアリズム

読んだ。当時注目してただったちょっとひねくれた同人作家がこういう本を激推していたので (マジでなんで読んだんだ)。
マーク・フィッシャー(イギリスの批評家)が書いた、資本主義を批判する本。
資本主義以外の社会体制が存在し得ないということが社会的な前提になっていることを資本主義リアリズムと定義し、今の多くの先進国がそれに陥っている。
自由と自己実現の可能性を開くものとされた資本主義が、実際には官僚主義をはびこらせ、うつ病患者を大量発生させており、(具体的な代案は示さないものの、)こういった問題点を資本主義の問題点として捉え、当たり前とされている仕組みを疑うことから始めよといった感じの本。

著者がポップカルチャー批判とかをしている人で、あらゆるところに映画・音楽・小説・哲学の引用が出てくるが、ほとんど分からない。
あと、言いたいことの雰囲気は分かるけど文章としては論点が行ったり来たりして読みづらい。ついでに言うとナメてんのかってレベルで文字が大きく行間が長くページ数がかさ増しされており、これこそが資本主義だなあという気分になってしまった。

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

読んでる。

1: イントロ 1-1: 19世紀において、プロテスタントカトリックが混在する地域で、プロテスタントの方が経済的に繁栄している理由はなんだろう?社会的少数派-多数派や、支配階層-被支配階層か、ということとは独立のようだ。
1-2: ベンジャミン・フランクリンは禁欲・殖財・勤勉自体を至高のものと語る文章を残しているが、これは近代資本主義以前に欠けていたエートス(倫理的な行動規範)で、現世での生活を重視する観点からは一見不合理に見えるほどの自律心が資本主義の発展を支えているのだが、この観念(特に天職を全うするという信念)はどこから来たのだろうか? プロテスタントもまた利益の追求を罪なるものと考えていたし、宗教の生活への介入はカトリックよりよほど厳しいものであったはず。 1-3: プロテスタントの優勢な地域には「天職」に相当する神から与えられし職業という言葉があるが、これに相当する語はカトリックやそれ以前の言語には基本的に見られない。この用法の発生は、聖書の翻訳者によるところが大きいだろう。
ルター派の成果として大きいのは、現世での職業労働を宗教的に肯定し、道徳的なバックボーンを与えた。しかし、「神への服従と所与への無条件の適応を同一視」しているように、のちに見られるような職業的成功により救いを実践する、といった方向性は見られなかった。一方、ピューリタン(カルヴァン派)は、世俗的生活を使命ととらえる姿勢が見られる。
以降では、各宗派が資本主義の形成にどう関わり、どのような親和性があったのかを見ていく。

2: 本題 2-1: カルヴァン派の予定説は、神に選ばれた者は神の栄光を増すために現世の職で成功することを徳に結びつけた。さらに、選ばれたことの救いの確証を得るための手段としてより仕事に打ち込み確証を得るか、救われていることを信じ心の安寧を保つかで、どちらも勤労に結びつくものだった。
この結果カルヴィニズム特有の、俗世内の「禁欲」(自堕落な状態を回避し事故を律する生活を保つこと)を是とする思想が生まれていった。

2-2: カルヴィニズムを信奉する人は、勤労と倹約を是としたため、本来お金を儲けること自体はまったく宗教的な目的ではなかったにも関わらず、結果的に裕福となり、事業者であれば成功を収め、労働者であれば近代資本主義の基礎となる継続的に一つの仕事に従事する者となった。そうした倫理体系の者たちが一度ビジネスを制圧してゆくと、もはや倫理自体は力を失った後にも、得られた習慣は継続し(そうでなければ商売で打ち負かされるので)、今ではそれに皆が何の疑問も抱かなくなっている。

もう少し資本主義的生き方に疑問を差し挟んだいいな〜と思って読んでみたが、なかなか面白かった。文明の発展とともに資本主義はひとりでに発生するものではなく、こういった世俗内禁欲の条件が揃ったときに成立する、というのはなるほどと思った。
もともと宗教団体や慣習の腐敗を一掃するために聖書への回帰を謳ったプロテスタントが、結果的に合理主義的姿勢を是とし、近代成立にこうした役割を果たしたと考えると、歴史の綾は面白いなあと。

ドイツ語の性質なのかどうかわからないが、1文が長く、文の中に間投された文が多いので、読みづらい。段落もかなり長めのものもあるので、人名や宗派の認識に手間取っているとすぐ何の話かわからなくなりがち。

日本仏教史

読んだ。京都に滞在してた間、せっかくだし仏教に詳しくなろうかなと思って。

特に宗派などによらない、仏教史の概観の解説。なんか奈良〜平安初期と鎌倉期がやたら充実してんなと思ってたら、それ以外の時代ではそんなに仏教に大きな進展はなかったようだ(常識らしいが…)。
なんかこの単語聞いたことあるな〜程度の概念が大量に解説される。正直、元々仏教に詳しい人というわけでなければ、出てくる概念が多すぎて消化不良になると思う。ただまあ仏教系のワードは特に調べもしないと名前だけ知ってどういう意味なのか知らない事柄が多すぎるので、一通りまとまった解説を文章で読むだけで無からはだいぶ理解が向上はすると思う。
仏教がどう信じられていたのかというのはいまいちイメージしづらいなと感じていて、強いていうなら風の谷のナウシカ(漫画版)の法力っぽい力使うすごい宗教集団のイメージだったんだけど、

  • 現世利益を求める呪術を扱う密教
  • 戒律と修行で悟りを目指すグループと、本覚思想など現世肯定の意識が強いグループ
  • 南都六宗など学問仏教と、民衆を救済する新仏教

とか、まあかなりいろんなグループがあり、一緒くたに捉えるのは難しそう。まあでも験比べとかもあるし案外ファンタジーな世界だったのかもしれない。

巻末の日本での展開をまとめた部分はちょっとおもしろくて、経典は漢文を直接利用したんだけど書き下し方が一意というわけではなく、使う僧によってかなり恣意的な解釈もされており、ときに強引な主張も展開されていたらしい。そう考えると日本仏教は元の仏教とはかなり乖離しており、現世主義が強いことも考えると、本当に仏教と言えるのか?という視点が提供され終わる。
まあ経典があるとはいえ最終的に信じるのは人だし、地理的にも交流が少なくなりがちなので、土着化してるのは意外じゃないけど、それ以上に解釈はかなり適当で(もうなんでもありじゃん)とがっかりした部分もあり、ただその変容にも理由があってそれを考えるのも面白いのかな、と思った。

暗黙知の次元

純粋に人間の学習機構を明かす脳科学系の本だと思っていたが、メインはそうではなく、生物の存在の意味とか、最上階の暗黙知としての倫理とか、科学の意味とか、なんかそういうポストモダニズムの話だった。
一度読んだけど難しかったしそこまで興味もなかったので忘れてしまった(読後1週間)。

デジタルミニマリスト

読んだ。
人がSNSをひっきりなしに見続けてしまうのは、その人に問題があるというよりは、SNSが人の注意を奪うように作られているからで、四六時中タイムラインをスワイプして虚無な時間を過ごすより有益な時間を取り戻したいのであれば、SNSを始めとするデジタルツールにより何を得てどんなコストがかかるかを見極めてから生活に取り入れましょうという話。
これに説得力を持たせるため、人がSNSから離れ一人の時間を保つことの心理的な難しさ、それでも孤独が有益であること、利用を制限するための具体的な方法論、そもそも有益な余暇の活動とはどんなもので(この本では、負荷のかかる知的・身体的活動であるとされている)、どう生活の中に取り入れていくべきか…みたいな話が展開されている。 章立てや展開が若干とっちらかってる印象はあるし、一人でいる時間が大切なんじゃ〜と言った後にF2Fで人と付き合う重要性を説いたり、別に矛盾はしてないけどちょっとという部分もあるけど、全体としては有益で説得力のある話だなと思った。
まあテック企業を敵視しすぎているだろとは思ったが(別に悪意を持って人の時間を奪ってやろうとは思っていないと思う、結果的にはそうなんだが)。